量子コンピューティングの難題に挑むハードウェア実験

Google Quantum AIの研究者は、同社の超伝導プロセッサWillow上で「マジック状態培養」と呼ばれる技術を実証し、準備した量子状態の誤差を40分の1に低減したと報告した。Scienceに掲載されたこの成果は、このアプローチをハードウェア上で初めて成功裏に検証したものとされている。

この研究は、量子コンピューティングの中心的な障壁に取り組むものだ。量子ビットは壊れやすい。従来のデジタルビットとは異なり、量子ビットは周囲の環境や制御の不完全さによって乱される可能性がある。こうした誤差により、信頼性の高い計算、特に実用的でフォールトトレラントな量子コンピューターに必要な高度な操作の実行は極めて難しくなる。

今回の実験は「マジック状態」に焦点を当てている。これは高度な計算に必要な、特別に準備された量子状態だ。状態にわずかな誤差があるだけでも大規模な計算を損なう可能性があるため、高品質なマジック状態の生成は大きな課題となる。Googleの成果はフォールトトレラント量子コンピューティングという広範な課題を解決するものではないが、実際のハードウェア上で重要な要素を改善する道筋を示している。

蒸留から培養へ

マジック状態を改善するおなじみの方法に、マジック状態蒸留がある。大まかに言えば、蒸留は量子リソースから欠陥を取り除くフィルターの役割を果たす。機能する一方で、リソースを大量に消費する。少数の有用な状態を生成するために、相当量のハードウェアと処理能力が必要になる場合がある。

マジック状態培養は別の提案だ。同じようなリソース集約型のフィルタリングに頼るのではなく、保護された量子ビットの内部でノイズのあるマジック状態を直接きれいにすることを目指す。保護は、情報を脆弱な単一の構成要素にすべて置くのではなく、複数の物理量子ビットにまたがって量子情報を符号化することで実現する。

Willowの実験では、チームは意図的に訂正すべき誤差を含む状態から始めた。研究者はノイズのあるマジック状態を、少数の物理量子ビットからなる小さな格子に符号化した。その後、補助量子ビットを使い、繊細な量子データを破壊することなく、符号化された情報に誤りがないかを確認した。

検査で欠陥が見つかると、その試行は破棄され、システムは最初からやり直した。すべての検査に合格した試行では、精製されたマジック状態を後続処理のために保持した。この事後選択は重要だ。この方法は、すべての試行が成功すると主張しているわけではない。求める保護状態が検査を生き残ったケースを特定することを目指している。

40分の1という数字の意味

研究者によると、培養によって誤差は40分の1になった。採用されたマジック状態の忠実度は少なくとも約99.99%に達した。忠実度は、準備された状態が意図した状態にどれだけ近いかを示す指標だ。

New error-correction technique could dramatically improve the reliability of quantum computers
マジック状態培養の詳細。Credit: Science (2026)。DOI: 10.1126/science.aee7961

この数字は、この分野で測定が難しい理由も示している。残った誤差が極めて小さい場合、それが小さいことを証明するには慎重な検証が必要だ。チームは、従来の手法より少ない測定回数で残存誤差を検出する「キックバック・トモグラフィー」という技術を開発した。

フィルタリングは選択的だった。最初の試行のうち、すべての検査に合格したのは約8%にすぎない。このトレードオフは、培養をめぐる実用上の問題の一部だ。採用される状態の品質を大幅に高められる一方、繰り返し試行が必要になる可能性がある。したがって、比較すべきなのは生き残った状態の誤差率だけでなく、有用な計算に十分な数を作るための総コストだ。

マジック状態が重要な理由

量子プロセッサは、ある操作を別の操作より自然に実行できる。最も高度な量子計算には、システムが必要な高度な操作を実行できるよう、慎重に準備されたリソースが必要だ。マジック状態はそのようなリソースの一つである。

そのため、信頼性の高いマジック状態を生成するコストは、将来のフォールトトレラントマシンの規模や設計を左右する可能性がある。より少ない総リソースで高品質な状態を作れる方法は、単一の研究室での実証をはるかに超える意味を持ち得る。一方、ある一つの構成要素で強い成果が得られても、それだけで完全なフォールトトレラント量子コンピューターが実現したことにはならない。最終的には、信頼性の高い量子ビット、誤り検出、制御システムなど、完全なアーキテクチャの他の要素と組み合わせる必要がある。

Willowの成果が注目されるのは、これまで実際のハードウェアで成功裏に試験されていなかったアプローチを、超伝導プロセッサの不完全さにさらした点にある。実験はこのアイデアを理論上の選択肢から、ハードウェアの制約と照らして評価できる工学的成果へと進めた。

実用上の課題を残す画期的成果

今回の成果は、量子誤り訂正が解決したという宣言ではなく、有望なツールの実証として捉えるのが適切だ。実験は、ノイズのある保護状態を選別して精製でき、選ばれた状態の誤差を大幅に低減できることを示している。

意義は、ハードウェア性能と検証を組み合わせた点にある。チームは培養が機能するはずだと提案しただけではない。ノイズのある状態を符号化し、補助量子ビットで検査し、失敗した試行を破棄し、生き残った状態の品質を測定した。新しいトモグラフィー手法は、報告された誤差レベルでこうした測定を可能にする一部となった。

量子コンピューティングでは、進歩はこうした構成要素レベルの進展によってもたらされることが多い。重要なリソースの準備を改善すれば、多くの困難な段階が残っていても、より大きなシステムの工学的なバランスを変えられる可能性がある。Google Quantum AIの40分の1という成果は、信頼性の高い量子計算に向けて研究者が取り組む中で、マジック状態培養を確立された手法と並べて検討する価値があることを示している。

この記事はPhys.orgの報道に基づいています。原記事を読む。

Originally published on phys.org