超高速X線科学の新たな基準
米国エネルギー省SLAC国立加速器研究所にあるLinac Coherent Light Source(LCLS)の研究者らは、X線自由電子レーザーでこれまでに記録された中で最も短い高エネルギーX線パルスを測定した。報告されたパルスの光子エネルギーは約9キロ電子ボルトで、持続時間は100〜400アト秒だった。
アト秒とは、10億分の1秒のさらに10億分の1に当たる時間である。この時間スケールでは、研究者らは電子の運動を含む、物質中の極めて速い過程の研究を目指している。研究成果はNature Photonicsに掲載された。
この成果が重要なのは、パルスの持続時間だけではない。研究チームがその時間を測定できた点にも意味がある。SLACの研究者で論文著者のAgostino Marinelli氏によると、高エネルギーのアト秒X線パルスを生成する技術は数年かけて習得されてきたが、パルスがわずか数百アト秒しか続かないことを実証するのは、より難しい課題だった。
硬X線は速度と透過力を兼ね備える
実験では、硬X線、つまり高エネルギーX線に焦点を当てた。約9 keVのパルスは原子系の奥深くを探るのに十分なエネルギーを持ちながら、超高速な時間スケールで電子の運動を捉えられるほど短い。この組み合わせにより、物質を最も小さく速いスケールで調べる実験に適したものとなる。
X線自由電子レーザーでは、短いパルスだけで実用的な科学能力を確立することはできない。研究者には、パルスのエネルギー、スペクトル、形状、持続時間を特性評価する方法が必要だ。このような診断手段がなければ、正確なタイミングに依存する実験に必要な信頼性で超短パルスを確認することはできない。
パルス診断に蛍光を利用
東京大学のIchiro Inoue氏は、増幅自然放出(ASE)に基づく間接的な測定手法を提案した。ASEは、強く集束したX線パルスが物質を励起し、前方に蛍光を発生させるときに起こる。元のX線パルスに関する情報は、その放出された蛍光に埋め込まれている。
LCLSの実験で、研究チームはアト秒X線を含むと考えられるビームを生成した。ビームの一部は検出器に送り、エネルギーとスペクトル形状を測定した。残りのビームは、銅箔上の幅わずか150ナノメートルのスポットに集束した。この相互作用によってASEが生じ、2台目の検出器で捉えられた。

蛍光信号を元のビームの測定結果と組み合わせることで、研究者らは持続時間を含むX線パルスの特性を推定できた。診断結果は、硬X線パルスが100〜400アト秒の範囲にあることを示した。
測定が重要な理由
超短パルス研究では、タイミングツールを研究対象の現象に合わせる必要がある。電子の運動は、より長い時間スケールで見える化学変化よりはるかに速く進むことがある。原理上、数百アト秒続くパルスは、より長いX線フラッシュよりもはるかに鋭い時間窓を提供できる。
したがって、今回実証された診断手法は、硬アト秒X線の生成に重要な実用能力を加える。研究者はパルス持続時間を仮定するのではなく、そのビームが超高速実験に必要な特性を備えているか評価できる。
この研究は、科学機器の進歩における実験手法の役割も示している。今回の記録は、ビーム生成、ナノメートルスケールの集束、銅ターゲット、そして相補的な2種類の測定を組み合わせた成果だ。超高速ビームを測定可能な結果へと変えるには、各要素が必要だった。
今後の展開
原論文は、これらのパルスが最も小さく速いスケールの研究に有用だと説明している。これは、高エネルギーX線で原子系を探り、アト秒のタイミングで高速な電子挙動を分解する研究につながる。今回報告された結果自体は、新しいパルスを使って観測した特定の物質や過程を説明するものではなく、パルス能力を確立・検証するものである。
LCLSおよびX線自由電子レーザー分野全体にとって、今回の進展は新たな測定基準となる。すなわち、光子エネルギーが約9 keVで、持続時間が最短100アト秒の硬X線パルスを、ASEに基づく診断で確認した。将来の実験は、硬X線の透過力とアト秒科学の時間分解能の両方が必要な場合、この基盤を活用できる。
要点
- LCLSは100〜400アト秒続く硬X線パルスを測定した。
- パルスの光子エネルギーは約9 keVだった。
- チームは銅箔からの増幅自然放出を間接的な診断手段として利用した。
- 研究成果はNature Photonicsに掲載された。
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